バンコクで来週開催される「日本映画祭2017」のラインナップで見つけた「あん」という作品。
樹木希林さんが出演されるというので気になっていました。
「あん」って何だろう? とも。

すると、タイミングよくBSでの放送を発見。観ることができました。

満開の桜から始まって、満開の桜で幕を閉じる。
木々の色と、風の音と、人の暮らしと、時間の流れと、どれもが溶け合って、引き込まれました。
脚本が素晴らしくて、樹木希林さんが演じる徳江さんの話す言葉のひとつひとつが胸に届きました。

街角にある小さなどら焼き屋さんをめぐる人たちの話。
そこに現れた徳江さんは、病気のために世間と隔離された世界で暮らさざるをえなかったなか、あんを作り続けてきたのです。
そのあんはとてもとても美味しいのでした。

徳江さんのあん作りのシーンが好きです。
少しずつ、しずかに、ゆっくり、そっと。
土からせっかく自分のところに来てくれた小豆一粒ひとつぶへのおもてなしの気持ちを込めて、
小豆がじわりじわり心地よくあんになれるように、時間をかけてコトコト煮るのです。

小豆の気持ち。木の気持ち。風の気持ち。
徳江さんはいつも耳を澄まします。
自然はただあるんじゃなくて、そこにも息吹がある。
人とも動物とも同じように。

静かな映像でじっくりと伝え観せてくれる河瀬直美さんの世界。
とても良い映画でした。

マメノミンタロウ